6月の終わり。
梅雨明けの晴天の日に、私は出産した。
元気な男の子は、勇大(ゆうだい)。
名前は、公がつけた。
いい名だと父さんも喜んでいる。

そして気づいた。
公ってとっても過保護。

今日だって、
「えー、だからもう熱は下がってきてるんだから、寝かせてやりましょうよ」
「そんなこと言って何かあったらどうするんだ?」
「だから・・・」
会話は完全に平行線をたどっている。

今、3日前から風邪気味の勇大の熱が下がらないのを心配した公が、救急に連れて行くと騒いでいる。

「だから、昨日小児科でもらった薬もまだあるし、熱だって上がってきているわけじゃないし、胸の音も綺麗なの。今夜は様子を見ましょうよ」
「ダメだ。何かあってからでは遅い」
「でも・・・」
この人本当に医者なんだろうかと、見つめてしまった。

「ねえ、今救急に行っても診るのは救命医なのよ。仮に専門医を呼ぼうって話になったとして、呼ばれて出てくるのは小児科医なの。その小児科の私がいうんだから、信じてよ」
「それでも・・・心配なんだ」
まるで小動物みたいな真っ直ぐな瞳で見られると、もう私の負け。

「わかりました。そんなに言うなら行きましょう」
私と公と勇大は救急外来へと向かった。