あっという間に、公と私の噂が広まった。
でも不思議なくらいお祝いモードで、今まで隠していたことが何だったんだろうと思うくらい。
ただ不機嫌そうなのは、今日も様子を見に来てくれた翼。

「ありがとう、翼。お世話になったわね」

主治医は産科に変わったのに、日に1度は顔を出してくれている。

こうして交際が公になったからには翼の家に同居するのもおかしいだろうとの公の意見で、私は今引っ越しの準備中。
翼はそれが不満らしい。

「俺は別に、これからもお世話するけれど」
冗談とも本気ともわからない翼の呟き。
しかし、
「その必要ない」
ちょうど病室に戻ってきた公が、ピシャリと言った。

「もー、公」
こんなところで、嫉妬心を燃やさないで。

考えてみれば、七年って短い時間じゃないもの。
お互いに学生から医者になるまでを一番身近で見ていたんだから。
いうなれば家族に近い感覚。
いきなり出て行くことになって、翼だって戸惑いがあって当然。
時間をかけて慣れていくしかないのに。

さすがに渋い顔になった私に、
「もう、遠慮はしない。お前が俺を呼んだんだぞ」
公が念を押す。
「それは・・・わかってる」

「逃がさないからな」

「・・・うん」
私も、もう逃げない。