“被害者面をするな”


よくネットで囁かれるその言葉。
それはお互い様の時に使われるような言葉だ。

お互い様でもなんでもないが、私の状況にも当てはまるだろう。


彼は、指示に従わなければ金を貰えない。
金を貰えなければ、生活できない。

一度その世界に染まってしまえば、足を出すことは出来ない。


でも私は父が死んだ今、どう生きていけばいいのかというのが明確になっていない。

父が死んだということに、現実味が感じられない。


しかしそれは明確になっていないからで、明確にさえなれば生きていけるだろう。


アキさんは、どうだろう?
このまま、生きていけるというのだろうか?


優里さんが不安がる私の手を握る。
細く白く、長い指。

すぐ折れてしまいそうなその手は、小さいが暖かい。



そんな不安に、さらに不幸が降りかかる。



「ちょっとアンタ!なんでそこで止まるんだ、早く進んでくれ!バスが進めないだろう」



高速道路は渋滞になっているということで、下道を走っていた。

林道に差し掛かった時、二車線を塞ぐ様に車が止まっている。


嫌な予感に、ドクンと心臓が鳴った。