母はいつも私のことを自慢げに語る。
でも父は、私のことは当たり前だと言いたげだった。



『本当に、心の小さい男よね』


『紫ちゃんは偉いのよ、お母さんの子だから』


『本当に、かわいいかわいい紫ちゃん』



私を褒めようともしない父を、心が小さいと母はよく私に言っていた。

私は母が正しいと思っていたから、特に何も言うことは無かった。

言い方はともかく、事実はそうだと。


しかし、父は心が小さいのではなかった。
ただ、私を見守っていただけだった。


良い結果で一度褒めれば、その結果じゃないと褒められないと思ってしまう。

思い返せば一度、父が褒めてくれたことがあった。



『40点!?なんて点数...!勉強が足りないのね』


『...難しいテストだったんだろう。頑張ったな』


『こんな小学生のテスト、難しいわけないじゃない!』



酷く落ち込んでいた私に、父はそれだけ言った。
ヒステリックに叫ぶ母なんか、私には気にならなかった。

ただ、そう同情してくれた父のことを不思議に思うだけだった。