私は幼い頃から、大人に従い続けていた。

反発なんて、記憶の中にはない。
唯一したとすれば...いいや、やっぱりない。


親の言うことさえ信じていれば、褒めてもらえる。

親の指示さえ従っていれば、褒めてもらえる。



『紫ちゃんは、言うこと聞けていい子ね』

『いい子でしょう?うちの子だもの』

『うちの陸斗も、そんなふうになって欲しいものだけれど』



母が言う、私の子だものという言葉。
それはまるで、父の影響はないという言い様で。

なんとなくだが、嫌だった。

私は紛れもない二人の間の子で、母が1人で妊娠して産んだ訳では無い。

必ず、父親がいるはずなのだ。



『...邪魔だ、部屋で勉強しろ』


『ちょっと、そんなこと言わなくていいじゃない』


『お前も、勉強くらい1人で集中させてやったらどうなんだ、いちいち口を出してばかり』



小さい頃はその父の言い方だけにむかついていて、母親が可哀想だと思っていた。

でも成長して、だんだんそれが私のためだと理解できた。

誰よりも私のことを考えていたのは、父だったのだ。