「えっと...」


「...何を渋っている。車に乗れ」



あのあと着替えて、何を持っていけばいいのかを男に聞いた。

その男は“暇つぶしにできるものと、服をこれに入れろ”と言って、大きいボストンバッグを私に投げた。


服はなるべく多く詰めろとのことで、小さく畳んで入れた。

元々服は多く持っていなかったから、ボストンバッグに十分入った。


それから暇つぶしの本を3冊を入れた。


スマホとイヤホンはポケットに。



「どこに行くんですか」


「俺の家だ」


「え?」


「...聞こえなかったのか。俺の家だ」



そう言ってサラッとエンジンをかけて発車する。



「えぇと...家はどこに?」


「トウキョウだ」


「...ここ、サッポロですけど」



知っている、男はそう言って高速に乗る。
どうするんだろうかと思っていると、彼は車に着いているテレビをつけた。



「暇だろう。車の中で本を読んでも酔うだろうし、のんびり聞き流しながら外でも見ていろ」



そうして、私たちの長い長いドライブのようなものが始まってしまった。