「行っちゃいましたね」


「でもこれで、心置きなく二人で話せるでしょう」



優里さんがゲームを始める。
協力型のホラーゲームだ。

1Pが主人公を操作し、2Pが主人公に近づく幽霊を10秒間止めることが出来る。



「まずは敬語外そうか、一個しか変わらないじゃん」



そう言って酒を飲む優里さんに、そうだね、なんて返す。



「思うんだけど...なんで紫ってそんな落ち着いていられるの?」


「落ち着き、ですか?」


「私は心の中で暴れてたし、何より約束があったからなんとも思ってなかったけど」


「...落ち着きより、諦めかもしれません」



アキさんは、私を逃がす気は無い。
父を殺したと知っている以上、逃がせるわけが無い。


生きるなら俺が面倒を見ると言ったし、死ぬなら俺が殺すとまで言った。

私を生かすのも殺すのも、彼しかいない。



「諦めてる?」


「どうせ逃がす気は無いだろうし...何より、戻ったところで私一人じゃ何も出来ない」


「何も出来ないか...それもそうだね」



文章ばかりだったゲームが切り替わり、操作できるようになる。

血まみれの薄暗い館が舞台だ。