失恋から1ヶ月後、私はいつもと変わらない日々を過ごしていた。

1つ変わったことがあるとすれば、席替えで無口王子が隣の席になったことだ。

そのお陰で休み時間になる度に無口王子を見に来る他のクラスの女子から、、

『隣の女誰。廉くんに近づかないでよ』

『たいして可愛くもないくせに隣だからって調子乗るなよ』

席替えしてからの1週間はとてつもなく苦痛だったけれど私は心を無にして耐え続けた。

「あなたのお陰で私の生活めちゃくちゃなんですけど?」

なんて口に出しても返ってくる言葉はない。
無口王子と言われてるだけあってホントに男子以外とは話さない。
今までも彼女を作ったことがないという噂を聞いたことがある。

「優奈も毎日大変だねぇ〜」

紗枝が他人事のように言ってきた。

「紗枝〜(泣)お願いだから席変わって?」

「無理無理。こんなの私には耐えられない笑」

紗枝のイジワル!ちょっとは助けれくれてもいいのに〜!!

今ではこういう風に友達と笑いあえているけれど失恋した直後は紗枝にもたくさん迷惑かけた。

この恋を1番に応援してくれたのが紗枝だったから、事情を話すと怒って悠介のところに行こうとしてた。
あんなの絶対許さない!って何度も言ってたし、優奈を泣かせる奴はこの手で潰すなんて怖いことも言ってた。
こんな風に私の事思ってくれてたことが嬉しくて少しは楽になった。

授業の始まりのチャイムが鳴り、紗枝も席に戻り他クラスの女子も帰っていった。


古文の授業は眠くなる。
クラスのほとんどが寝てしまっていて、隣の無口王子も気持ちよさそうに寝ていた。

こうして見ると美しい顔してるな〜
目もくっきり二重だし、鼻も高い。
気付かなかったけど、右目の下に涙ボクロある。

私は思わず見惚れてしまっていた。
すると、無口王子と目が合った。

「なに」

「あ、いや、ただ... 」

「見惚れてたの?」

「...うん」

私は見惚れていたのがバレたのが恥ずかしくなって目を逸らした。

「顔」

「え?」

「赤くなってる」

そう言って無口王子は微笑んだ。