あの日溺れた海は、


先生って、つくづく不思議な人だ。


不思議で、もっと知りたくなる。


そう口から出かかったけど、なんとなく恥ずかしくなってやめた。




『脳に、刺激?』



『そう。例えば─』



病院で聞いた主治医の言葉が不意に頭の中で響いて、頭を軽く振った。


「そんなことはさておき、他の人たちは?」



「えっと…海です。すぐそこの。」



先生の問いかけに、わたしが外を指さしながら答えると先生は再びため息をついて頭を抱えた。


「…子供だけで海へ行くなって習わなかったのか……井上さん、お会計はこれで。わたしは彼女たちを監督しに行く義務がありますので。井上さんはできれば旅館内から出ないように。」


先生は財布からお札を抜き取って机の上へ置くとすくっと立ち上がるとわたしが指をさしたほうに向かっていった。


遠ざかる先生の背中を見つめながらふう、と安堵のため息をついた。


藤堂先生が声をかけてくれなかったら…


その先の末路を考えて背中がヒヤリとした。