あの日溺れた海は、





「ん〜…おいし〜。」


たまたま見つけた旅館の外にある小さな喫茶コーナーで、わたしと先生は向かい合ってアイスを食べていた。

とはいってもアイスを食べているのはわたしだけで、先生はアイスコーヒーをストローでかき回しながらわたしを訳の分からないという表情で見ていた。


「そういえば、先生はいつの間にわたしたちの部屋に侵入してたんですか?」


わざと呑気な雰囲気を醸し出してそう問うわたしに、先生ははあ〜、っと長いため息をついて「侵入とは人聞きの悪い。」と反論した。


そう言う先生はどこかふて腐れたような言い方で、それがなんだか新鮮でわたしはフッと吹き出してしまった。


そんなわたしに先生は遠慮無く怪訝な表情を向ける。


「冗談ですってば。…でもてっきり海の方にいるのかと思ってたので。」


わたしは一生懸命笑いを堪えながらそう言った。


「あなたたちの午後の予定を聞きそびれていたのでね。私に監督責任があるので…」


ぶつくさ言う先生にわたしは同情の色を含めて言った。



「…先生って大変ですね」


「井上さんが思っているよりは、ね。」



自嘲気味に片頬をあげながらそう言う先生にわたしは再び吹き出した。