あの日溺れた海は、




しーんと静まり返った部屋に、誰かが開けた窓から波の音が遠くに聞こえた。



そして、潮の匂い。



すうっと深く息を吸った。



再び身体中に広がる潮の匂いに懐かしさを感じた。



ざぱん、と迫りくる波の音がより近くに聞こえた。



飲み込まれると闇を抱えているかのような青黒い水の中。



水の冷たさが今度は肌を刺すように伝わる。



水面へ上がろうとしてもそんなわたしの意思とは裏腹にどんどん闇の中に引き込まれていく。



遠くから野太い怒鳴り声が聞こえた。



何かを言ってるけど、鮮明には聞こえない。



でも間違えなくわたしを責め立てている。



それから甲高い悲鳴が上がった。



息苦しさにもがき続けるがとうとう目の前がより深い闇へと染まっていく



はっ、はあ、はっ



不規則に続く息だけが遠くに聞こえる。



いやだ、怖い、助けて



ごめんなさい



お願いだから




助けて




「…うえ、さ、いのうえ、さん…」