あの日溺れた海は、




「うわ〜!綺麗〜!!」



車で1時間ほど走ったところだろうか、道が開けあたり一面に海の青が広がった。颯爽と海岸線を走り抜けると半分ほど開けた窓から気持ちの良い風が入り込む。車の中に満ちた潮の匂いに部員達の気持ちはどんどん昂っていく。



「きもちい〜!」


「せんせーもっと飛ばそ〜!」


「…安全運転で行きますよ。」


そんなを会話を繰り広げながらナビはどんどんと目的地へと近づいていく。


わたしは海とは反対側の道路側をぼーっと見つめていた。

右手にある海を見ると藤堂先生を見つめているような構図になってしまって気まずい。それに、海は苦手だ。視界に入るのも怖い。


そんなわたしの複雑な心に気付くはずもない部員たちのはしゃぎ声がまた車内に響いた。