あの日溺れた海は、

梅雨入りが発表された週の金曜日。
その日の放課後に少し前に回収された『進路希望調査票』を元に面談が組み込まれていた。


出席番号順で二番目のわたしは廊下に出された椅子に座って、緊張を抱えながら順番を待っていた。


「最初に言ったように進路関係の事に関しては藤堂先生が受け持ってくれるのでー」

今朝の朝礼でおじいちゃんが言ったことを思い出し、更に気が重くなった。

複雑な状況が絡み合った今、藤堂先生とどんな顔をして話せば良いのかわからなかった。


先生が添削してくれたこと、本当は嬉しかったのに、勢いに任せて自分の気持ちとは違うことを言ってしまったことを謝るべきなのか。


山崎さんに破れた原稿用紙を渡して直すように言ってくれたことにお礼を言うべきなのか。


頭を抱え込んで悩んでいると前の生徒が出てきて、入るように促された。


重い足取りでドアへ向かうと、「失礼します。」と言って入室した。自分でも想像以上に震えた声に、更に緊張を掻き立てた。