あの日溺れた海は、

「ということで、今配った進路希望調査の紙は来週の月曜日に集めるので忘れないようにね。」


未だに手元に破られた原稿用紙が戻ってこず1週間ほど経ったとある日の朝。
朝のHR中配られたプリントに目を通しながら、教壇にたつおじいちゃんの言葉にわたしは小さく頷いた。


「大学について調べたかったり、進学実績とか見たい人がいたら進路相談室に行って調べてね。」


おじいちゃんがそういうと丁度HRの終わりを告げる鐘が鳴り響いて、それと同時に「じゃあ。」と教室をゆっくりと後にした。


高校二年生になると少しずつ進路が決まる生徒が出てくる。

美容師になりたい

映像に携わる仕事につきたい

はたまた難関大学に入りたい…


わたしはもちろん小説家になるつもりだ。

早速貰った紙の【将来希望する職業の欄】に、『小説家』と書いた。


しかしその下の欄の【進学を希望する大学名、学部】を見るなり勇んでいた手がぴたりと止まった。

今までただ漠然と小説家になるんだと志してきたけれど、じゃあどこの大学のどこの学部に進もうなんて考えたこともなかった。


まあ提出期限まであと1週間もあるし、放課後に進路相談室に寄って調べればいいか、なんて呑気に思ってプリントを机の中にしまい込んだ。