あの日溺れた海は、


その瞬間、席と席の間の通路に誰かが通った。



鼻を突く、その香りに反射的に振り返った。




あの原稿用紙からした香りと同じ、あの香り。




振り返った視線の先にいたのは。









「千晃(ちあき)ちゃん…?」




「ん?…あ、華ちゃん、おはよ〜…?」



わたしの声に彼女は驚きながらもこちらを見て挨拶をした。特別仲がいいわけでもないわたしたちは普段は挨拶も滅多にしないからそんな顔をするのも当たり前だ。



わたしは勢いよく立ち上がって、千晃ちゃんの元へ近寄った。
確実に、あの時の原稿用紙からした香りが漂っている。


わたしはじっと千晃ちゃんの顔を見つめた。