あの日溺れた海は、


ああいう時の玲は何が何でも口を割らないと言うことを一年共に過しただけのわたしでもなんとなくわかっていた。



それに、こんなこと言ったら喬佳とか月に甘いって責められるかもしれないけど、無理してまで言わせたくなかった。


「とにかく、近くにいる、って曖昧すぎてわからないのよね。とりあえず同じクラスの人で探してみるしかないのかな?」



そう言う月の言葉にわたしは「そうだね。」と頷くも内心深いため息をついた。


1クラス40人もいる。女の子だと絞っても20人もいる。気の遠くなる話だ。


それはまた明日から考えようということになって、4人で部室へ戻った。






部室へ戻ると、教室の隅に座っていたはずの山崎さんの姿はなく、室内には玲しかいなかった。

玲に聞くと「帰った。」という答えだけ返ってきた。


部室から急に全員出ていくから呆れて帰ってしまったのか。あんまり良い印象を抱いている訳ではなかったけどせっかく部活見学に来てくれたのに申し訳ないなと思いながら、わたしも執筆を始めようと机についた。





あれ。ない。


机の引き出しの一番上に入れておいた書きかけの原稿用紙が消えていた。


赤ペン先生が持っていってしまったのか、と慌てて一度しまった手紙を鞄から出して目を通した。


そこには間違いなく『去年の部誌をお借りします。』とだけ書いてあり、書きかけの原稿用紙を持ってきますとは書いておらず、思わず首を傾げた。



書き忘れたのか。わたしの原稿用紙を持っていくなんて、今は彼女しか思い浮かばない。
まあいつか返してくれるだろうと呑気な考えに至って、引き出しを閉じた。