あの日溺れた海は、


「月、ちょっと。」

席に着こうとする月にわたしはこっそりと耳打ちをした。
月も何となく察したのか、頷くと、そのまま二人で教室を後にした。






「これ…。」



部室から出て、少し離れた廊下でわたしは月に例の手紙を手渡した。
月は差し出されたそれを受け取って目を通すとわたしに返した。



「こんなに近くにいるのに、か。誰なんだろう。…心当たりとかないの?」



そう月が言うと少し考えた後に首を振った。


わたしの近くといえば、文芸部員とクラスの友達と亮くらいだし、クラスの友達は特に小説に興味あるわけではないみたいだ。もちろん亮も。



「近くにいるって、仲がいいとかではなくて単に同じクラスなだけとか?…ってそう考えるとかなりの人が怪しくなるよね。」


「確かに…もう、誰なのよ。」


月の言葉にぽつりと呟いて、ため息をついた。