「それで、何が欲しいか決まったのですか。」
先生はわたしにそう問いかけると、食後のコーヒーを一口啜った。
わたしも口の中に放り込んだカタラーナをゆっくりと飲み込むと、「はい!」と答えた。
「ハンカチが、欲しいんです。」
「え?」
わたしの答えが相当意外だったのか先生は声を上げてそれから不思議そうな目でわたしを見つめた。
チョコとか、クッキーよりも、形に残るものが欲しくて、学校にいてもそばに置いておけるものがよかった。
でもそれを説明するのは少し照れるから、「ハンカチ、です!」と有無を言わせぬように少し強く返した。
先生は納得したのかしてないのかわからないけど、「そうですか。」と返すと、「じゃあ、もう少し走って雑貨屋とか見てみましょうか。」と続けた。
わたしが「はい!」と元気よく返すと、店員さんがおずおずと後ろから現れて、「あの…」と、私たちに声をかけた。
「よろしければ、今アンケートをしていて、こちらご記入していただけますでしょうか?」
そう眉を下げておねがいする店員さんに断る理由もなく、わたし達は快くペンを取った。
名前、生年月日、電話番号。接客や味の満足度。スラスラと書いて丸をしていく。先生も書けたようで、そのまま席を立つとお会計と同時にその紙を店員に渡した。
店員さんはアンケートを受け取ると、満面の笑みを浮かべて「ありがとうございます!」と言って、少し間を空けてから「え!」と声を上げた。
「お客様、今日お誕生日なんですね〜!」
目をまん丸くして藤堂先生を見つめる店員の言葉にわたしも驚いて先生の方を振り返った。
先生は、はは、と苦笑いを浮かべると、この会話を終わらせたいのかカードをカルトンの上に置いて「一括で。」と早口で返した。
それを察したのか、店員もそれ以上は突っ込むことはなく淡々とお会計を進めて、わたしだけがただ一人目を丸くして先生をじっと見つめた。
先生はそんなわたしの視線を無視して、サインをすると、受け取ったカードと共に足早に店を出た。

