あの日溺れた海は、


「こ、こんにちはっ!」

時は少し過ぎて、3月14日。

今日は土曜日で、なんといっても春休み1日目だった。


そんな日に、朝から鏡と睨めっこしながら選んだクリームのタートルネックに、黒のミニスカートに、同じく黒のブーツで、最寄りの駅から2駅いつもとは反対方向に乗って降りると、見慣れた黒のSUVに駆け寄って、丁度降りてきた彼ー藤堂先生にぎこちなく挨拶をした。



「こんにちは。寒いですから、早く乗ってください。」


そう言って先生は助手席側のドアを開けると、わたしに乗るように促した。

初めてお姫様のような扱いをされてドギマギしながら乗り込んだ。


「すみませんね、わざわざ最寄りから離れたところで…。」


運転席側から乗り込んできた先生がそう申し訳なさそうに言うから「全然!こちらこそありがとうございます!」と食い気味に言った。



今日はわたしと先生の初デート。(仮)
なんでこうなったのかというと…。


バレンタインデーの日に、チョコレートをあげたら、お返しに、とこうして出掛けることになった。


わたしの家の最寄りからだと、同じ学校の生徒に遭遇する可能性も少なくない。

今日の先生は、いつもの銀縁メガネを外してコンタクトを入れているとはいえ、同じ学校の生徒がみれば藤堂先生だと言うことは容易に分かりそうだ。

そういうわけで少し離れた駅でわたしたちは待ち合わせをすることになっていた。


「じゃあ、行きましょうか。」


そう言ってエンジンをかける先生にわたしも「はい!」と返事をした。