あの日溺れた海は、

「おはよ。」



次の日、亮が朝練に出る時間を見計らって登校したわたしは最寄りの駅の近くでやっと亮の背中を見つけると彼の肩をたたいた。


「お、おはよ。」


まさかわたしとは思わなかったのか、少し驚いた顔で戸惑いながら返事をする亮にわたしは笑った。


そんなわたしを見て亮もつられて笑った。


「どうしたんだよ、こんな時間に。」


普段通りの感じで話す亮に、「伝えたいことがあって」と前置きをして、つづけた。



「わたし、今日先生に振られるの。」


「はあ?」


今日?振られる?藤堂に?と、わけのわからないといった様子でわたしに問う亮に、わたしはわざと笑顔で「うん、振られるの。藤堂先生に。」ともう一度繰り返した。


「…そっか、どういうことかわかんねえけど、…そっかあ。」


亮は何か考えながらそう呟くように返したかと思えば急に真剣な眼差しでわたしを見つめた。


「昨日までの華とだいぶ雰囲気が変わったから、なんかよかったわ。」


そう言ってニカっと笑う亮に、わたしも笑顔で返した。