あの日溺れた海は、


再び目を開けると、目の前にお母さんがいた。

学校から着信があったことに気づいて家に帰ってきたらしい。


「おばあちゃんが具合悪いっていうからちょっと様子見にいってたら華まで体調悪くしちゃうなんてねえ…気づかなくてごめんね。」


ただの体調不良なのか、それともすべてを察したうえでなのかわからなかったけど、少し泣きそうなお母さんの姿を見て、わたしは笑顔を作って「大丈夫。」とだけ返した。



「はな。ごめんね…気づけなくて。小学生の時の水泳のコーチのことだって、今だって、倒れる程華は思い詰めてるのに、ごめんね。

お母さんはね、華が元気なら何だっていいんだよ。水泳で賞なんて取れなくったっていい。小説を書くのがしんどいならやめたっていいんだよ。…だから、そこまで思い詰めないで。

せめて何をそこまで思い詰めてるのか、お母さんに話して。」


泣きながらそう言うお母さんに、わたしも思わず涙がこぼれた。


どんどん溶けていく心を、子供みたいに泣きじゃくりながら母に全て話した。


その間お母さんはポロポロと涙を零しながら、わたしの頭を優しく撫でて、静かに聞いてくれた。


「はなの初恋が先生なんてね…いや、今の時代年齢なんて関係ないわよね…。でも、そんな酷い態度とる男は何歳だってダメよ!もっとパパみたいに優しくて誠実で…。」


そう惚気始めるお母さんに思わず吹き出して「ちょっと!」と突っ込んだ。お母さんは舌を出してわたしにツッコミをお茶目に交わした。