あの日溺れた海は、


先生は運転席に乗り込んでエンジンをかけると車はそのまま走り出した。

冬の穏やかな日差しに照らされたコンクリートをただ無言で見つめていた。


車内には先生が設定したカーナビの声と、エンジン音だけが響いた。


先生はいまどんな顔をして、どんな気持ちでいるんだろう。

考えれば考えるほどマイナスな思考になっていく。
そんな自分が嫌で首を振って思考をリセットすると、再びコンクリートに熱視線を送った。




「ちゃんと、寝て、ください。」


沈黙を破ったのは藤堂先生のぎこちない声だった。