あの日溺れた海は、


その瞬間後ろから抱きしめられた。


背中に温もりが広がる。


後ろから回された亮のがっしりとした腕が視界に入った。

「大丈夫。」

その言葉でこらえてたすべてが心の中から溢れだした。


子供のようにわんわんと泣くわたしの頭を亮は「大丈夫」と言い続けながら優しく撫でた。


あのね、先生はわたしの気持ちを受け止めて、
あわよくば、もしかしたら、何かの間違いで、
思いが通じ合ったりもあるかもなって淡い期待を抱いていた自分が馬鹿みたいだった。


思いが通じるどころか、わたしの気持ちを受け入れることすらしてくれなかった。


進路の話以外は慎みなさいって、話を聞いてすらくれなかった。


自分がみじめで、恥ずかしくて、悲しくて、消えてしまいたい。


嗚咽を漏らしながら話している間も亮は優しく相槌を打って聞いてくれていた。


その優しさが余計に胸が苦しくなって、呼吸を整えると「ごめん、ありがとう。」と言って亮の両腕をほどいてまだ潤んでいるその瞳で亮を見た。


なぜか亮まで泣き出しそうな顔をしていて、それがまた更に胸を締め付けたから堪らず目を逸らした。


そして靴を履いて歩きだした。

亮も急いで自分の靴を履くとわたしの隣に並んだ。