「…井上さんは以前の面談から志望校は変わらず、ですね。」
とある日の放課後、藤堂先生と2人きりの教室内で面談をしていた。
先生はわたしが提出したプリントに視線を送りながらそう言った。
どこかぎこちない空気が流れていると感じるのはわたしだけだろうか。
「はい。ここの大学なら家からも通えますし、わたしが通いたい学部もあるので…。」
先生とクリスマスイブ以来、久しぶりにまともに話すというシチュエーションにどきまぎしながらわたしはそう答えた。
あの電話は、ノーカンでしょ。
ちらりと先生の表情を伺うと、何事もないようないつもと同じ飄々とした顔でプリントを眺めていた。
まるで、『あの日プレゼントをもらったことも、先生の過去を話してもらったのもわたしが告白したのも全部幻覚?』と思うほどに。
「ですね。入試は数学か地歴か公民のうちのどれか選択しなければですが…今の井上さんのテストの点数ならまあ大丈夫でしょう。」
「はい…。」
「…他に、進路のことで何か不明点とかは無いな。」
先生がそう問いかけると、今しかない、とふうと息を吐きだして口を開いた。
「あの、この間の大晦日に電話したことなんですけれど…。」

