あの日溺れた海は、

新学期初日の朝。

真冬だというのに緊張と恥ずかしさで変な汗をかきながら席についてカバンの中の荷物を片付け始めた。

自分から言っておいて、先生に会うのが気まずい。
 
どんな顔をして座っていればいいのかわからない。
 
こんなことなら言わなきゃよかったとすら思ってる。
 

「あけお…うわあ、何その新年早々おめでたくもない顔。」 


姫乃はわたしの顔を見るなりそう冷たく言い放った。わたしは突っ込む余裕もなく「はは。」と弱々しく笑うことしかできなかった。
 

「な、なによ。この世の地獄のような顔して。」 


少し顔を引き攣らせながらそう問う姫乃にわたしは「いや…。」と適当に濁した。
 
 
「あ、わかった。冬休みの課題まだやってないとか?課題テストの勉強してない??
だいじょーぶだいじょーぶ!このあたしもやってないし!どうにかなるわよ。」
 
そう言って姫乃はドヤ顔を浮かべながらトントンとわたしの肩を叩いた。

そんな姫乃に「うん、ありがとう。」と適当に返したところで予鈴がなった。

ドクン!と胸が嫌な高鳴りを響かせた。

顔を合わせたくないような、でもしばらく会っていなかったから先生が恋しいような、複雑な心境の中でわたしは自分の席についてじっと座っていた。

先生はわたしをみてどんな顔をするのかな。
気まずそうな顔?しかめっ面?照れた顔…はありえないか。