「も、もしもし。」
横で月が笑いを堪えているのがなんとなくわかった。
『もしもし。…先程はケーキをありがとう。』
「あっ、はい」
一瞬その為に電話をしてきたのかと拍子抜けした声が出た。
『…まだ、部室の鍵が帰ってきてないですが…今1人、ですか?』
「えっと〜、つ、……あ、いや、1人です。」
先生のいつもより微妙に上擦っている声に違和感を抱きながらも、月と一緒にいます、と答えようとした瞬間月にぺち、と肩を叩かれた。
月の方を見ると胸の前でバッテンを作って口パクで『ひ・と・り・で・す』と伝えてきた。
『そう、か、…そっちに行ってもいいですか…?』
「へっ?…あ、はい、もちろん!です…。」
その言葉をわたしの携帯に耳を寄せて聞いていたであろう月は急いで身支度をすると光の速さで部室のドアに手をかけた。
『が・ん・ば・っ・て』
そうにっこり笑って口パクで言う月に、わたしも緊張でぎこちない笑顔で会釈をして応えた。
『そうか。わかった。すぐに行く。』
そう言って先生は電話を切った。
先生から初めて電話がかかってきた高揚感と、突然やってきた告白のチャンスに緊張と、感動と、嬉しい気持ちがぐしゃぐしゃに混ざってうるうるし始めた目をぎゅっと閉じた。
落ち着け、わたし、大丈夫。

