あの日溺れた海は、


 
「…すごく飄々としているのに本当はすごく優しいところとか、笑った時の顔とか、わたしの好みを覚えていてくれるところとか…」
 
勇気を振りぼって小さい声でそう呟くように言うわたしに「えー!」と月は大きな声を上げた。
 
 
「好みを把握!?あんたたちどこまでいってんの!?!?てか私藤堂先生の笑った顔なんて見た事ないし!
 
 …もしかして好きすぎて幻覚を見てるわけじゃないわよね??」
 

わたしを憐れむような目で見つめる月をわたしはムッとした顔で小突いた。
 

だって本当に笑ってるんだもん。
 
「ま、まあいいわ。…で、どこまで進んでるの?」
 

小突かれたところをさすりながら月はそう質問した。
 

「どこまで…進んでる…?」
 
小突かれたところをさすりながらそう質問する月に、質問の意味がわからず聞き返した。

そうすると月はわざとらしくこほん、と咳こんで口を開いた。