あの日溺れた海は、


「おかしいかな。先生を好きになるって。そう思ったら月にも誰にも言えなくて…」
 

自然と流れてくる涙を手で拭おうとした瞬間、ぎゅっと抱きしめられた。
 

「つ、き…。」
 

「言ってくれてありがとう。おかしくなんかないよ。普通のことなんだよって、ずっと言いたかった。」
 
 
いつになく優しい声でそういう月に嗚咽を漏らした。
 

「誰を好きになるかなんて、自分で決められることじゃないもん。おかしいことなんてないんだよ。」
 

月はわたしから身体を離すと、わたしの目をまっすぐ見つめてそう言った。

 
そうなんだ。
 

そうだよね。
 

未だに泣き止まないわたしを見て月は目に涙を溜めながら笑った。

 
「はー、でも本当に嬉しい。華ってどこか自分の気持ちを隠そうとするから、自分から言ってくれただけで嬉しいの。
 
…だからこれを機に全部曝け出しちゃお!さて、じゃあまず先生のどこが好きなの?」
 
 
先程の真面目な表情とは打って変わって、ニヤケ顔で手で作ったマイクをわたしの前に差し出してきた。
 

「えっ、ちょっと、それは」
 
 
顔を真っ赤にして言い淀むわたしに「若いっていいですなあ」と同い年らしからぬ言葉を口にする。