「華。」
昇降口で、息を整えるように大きく肩を震わせながら呼吸をしていると、後ろから追っかけてきたであろう月に呼び止められた。
泣いているのがバレたくなくて、振り返ることなく「なに。」と言った。驚くほど震え声だった。
「わたしも急用できちゃったから、一緒に帰ろ?」
そう戯けて言う月の優しさに我慢していた涙が再びこぼれ落ちた。
「泣いてるの?お腹痛いんでしょ?よーしよーし。」
わたしの泣き顔を見るや否や、理由を聞くこともなくわたしの背中を優しく撫でてそう言った。
わたしも何も言わずただひたすら涙をこぼした。
月はきっと知ってる。
全て知ってるんだ。
わたしが藤堂先生のことが好きなことも、それを誰にも言えず苦しんでることも、真反対な性格をしてる清河さんに嫉妬してることも。
全てを知った上で、こうして気づいてないふりをして接してくれる。
『いつまでも待つから。大丈夫。』
あの日そうわたしに言った時から。きっと。
月、もう打ち明ける準備はできている。でも、今日だけは涙が止まらないの。
あともう少しだけ待ってて。

