あの日溺れた海は、


  
「あ!亮くん!」
 
 
左側から姫乃が引っ張っていた力が一気に緩まる。反動で月の方によろよろと体が傾いた。
 

「わっ」「ちょっと!」
 

そう驚嘆の声をあげるわたしたちを無視して姫乃は少し前を歩く亮を追いかけた。
 
 
「嵐のような女ね…。」
 

「行動が突拍子もない…。」
 

月とお互いの肩を抱きながらそう呟いた。
 
 
 
「水族館って夏合宿ぶりだなあ。」
 
青暗い空間の中を月と一緒に進んだ。

最初は発作が出ないか少し不安だったけど、意外と楽しめてる。
 
「あ、マグロだ。おいしそう〜。」
 

呑気な声でそう言う月の言葉にけらけらと笑った。

それと同時に少し先を行く藤堂先生の姿が見えた。
 
夏合宿で見た背中と同じ背中。でもその隣にはあの子がいる。

「あ、あの子って2組の寧々ちゃんだよね。最近藤堂先生と仲が良いよね〜。」

いつの間にか隣に来ていた姫乃が言ったその言葉がグサリと胸に刺さる。