あの日溺れた海は、


「亮、ごめんね。」
 
 

先に口を開いたのは、わたしだった。
 
 

「わたし、亮は何があってもずっと一緒にいてくれるって思ってた。だから亮の優しさに甘えて、自分のエゴで武田さんに協力したの。文化祭の日だって、ずっと一緒に回る約束してたのに嘘ついて約束破って…「はな」
 


今にも涙が溢れ落ちそうになってるわたしを見て、亮は優しく呟いた。
 

「華、いいんだ。わかってる。」
 


「ううん、駄目。ちゃんと言わせて。
いつも困ったわたしを助けてくれたのは亮だって分かっていたのにわたし最低なことをした。
本当は武田さんに嫌われたくないから協力したんじゃない。
亮の気持ちに気付きたくなくて、気付いてしまったらわたしは…
わたしは、亮と友達じゃいられなくなってしまう、から。」
 
こんな訳の分からない言葉の羅列も亮は理解してうんうんと頷いてくれた。
 



本当はずっと、亮がわたしのこと好きだって気付いていた。
 

亮がデートに誘ったのだって。


でも、わたしはその気持ちに応えることはできない。
 

そうなったら、亮とはもう友達には戻れないかもしれない。
 

唯一無二の存在なのに、それを自分のせいで失ってしまうのが怖かった。
 

だからずっと気付かないふりをしていた。
 
最低で、卑怯で、ずる賢くて、そんな自分にも気付きたくなかった。