あの日溺れた海は、


「おい。非行少女。」
 
空を仰いでてると突然暗闇から声を掛けられた。驚きながらもその声の方を見ると

 
「藤堂先生…。」
 

黒のコートを羽織ってしかめ面をしていた先生がいた。
 
 
「なに黄昏てるんですか。ホテルの外に出るなって言われてましたよね。」
 
そうめんどくさそうに言う先生に「すみません…」と小声で返した。
 

先生は自動販売機にお金を入れると「ココアでいい?」と聞いた。

わたしは「はい!」と元気よく答えた。
 
ベンチに座った先生はわたしにココアを渡すと、もう一つの缶を開けた。
 
この感じ、何かすごくデジャブだな。何て思っていたら先生が缶から口を離して言った。
 
 

「懐かしいな。」
 
きっと先生もわたしと同じで夏合宿の時を思い出してるのだろう。

あの時もわたしは肝心の財布を忘れて、運良く来た先生に奢ってもらったのだった。
 
「ですね。」
 
そう短く答えた。二人の間に沈黙が続いた。