あの日溺れた海は、


「もう夕食時間だよね?いこ!」
 
時計を見ると夕食の始まりまで10分を切っていた。

本当は食欲もないし、目はまだ腫れてるし、亮と顔合わせるのが気まずいしで行きたくなかったけど、行かないなんて言ったらそれこそ保健の先生を呼ばれたりで大事になりそうで、泣く泣く食堂へ向かった。
 
 
ご飯を食べ終えた後も一人になりたくて、気づけばホテルの外に出ていた。11月の初旬の夜の空気が頬を掠める。

あてもなくホテルの周辺を歩いていると、自動販売機の強い光が視界に入った。
 
あたたかいココア飲みたい…。
 
吸い込まれるようにその光へ向かう。

そして、目の前についたところで肝心のお金を持ってないことに気づいて、一人で首を垂れた。
 

そのまま隣に設置されていたベンチに腰をかけると、はあ、と落胆のため息をついた。
 

背もたれに寄りかかると京都の夜空が視界に広がる。ぽつ、ぽつ、と点在する星の光に思わず見とれた。