「玲…じゃないの?なんで部室の鍵を持ってるの?」
やっと出たその言葉に、玲は再び首を振った。
「私じゃない。鍵は空いていて、ここに置いてあった。」
そう言って、今度は手紙の隣に置いてある部室の鍵を指差した。
冷静に考えてみれば、最初に原稿用紙が無くなった時、玲はわたしの誕生日の準備で原稿用紙を盗む隙なんてなかっただろうし、字だって違う。
「そうなんだ…。」
今日こそこの目で赤ペン先生を見られると思っていたのに、淡い期待は見事に砕け散って奥底に沈んでいき、落胆したわたしはそう答えて椅子にかけた。
その瞬間。玲が笑った、気がした。
しかしわたしは手紙の返事を開けるのに必死で、すぐに見間違いか、と思い直した。
『赤ペン先生(仮)へ。
なぜあなたはわたしの原稿を持ってるんですか?
なぜわたしの原稿にアドバイスをくれたり校正してくれたんですか?
あなたはいったい何者何ですか?』
逸る気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと手紙の封筒を開けるとそうわたしが書いた便箋の余白に、あの整った赤い字が続いていた。

