あの日溺れた海は、


わたしは先生の隣なんて歩けない。
恥ずかしいし、烏滸がましいと思ってしまうから。

好きだという気持ちだって、嫌われたらどうしようと思ったら伝えられない。怖い。

先生が近くにいたらドキドキしてうまく笑えない。
 
あの子はわたしにないものを全部持ってる。


見ているだけで心臓が握りつぶされたように痛くて、だったらいっそのこと視界から排除すればいいのに、どうしても見てしまう。
 
近づかないで。そんな笑顔で先生を見つめないで。その手で触れないで。
 
そう思うたびにグツグツと心の中で黒い感情が煮えるような感覚に襲われる。

もしかしてこれが嫉妬っていうものなのかな。
 

しばらくするとギャルの子は他の組の副担任に強制的に連れられていった。

先生も心なしかホッとした表情になる。
 
 
どうにかしてわたしも近づきたい。

「大丈夫でしたか?」「あの子ってこの前の子ですよね」って2人だけで話したことを秘密を共有するみたいに側に行ってこっそりと言いたい。
 
そう思うだけしかできなかった。