あの日溺れた海は、


バスに乗ること数十分。京都の平等院へ着くとぞろぞろとバスを降りて行った。わたしもその列に続く。
 
 
なんとなく外へ出て、2-3列になったわたしたちはバスガイドさんに続いて1組から5組までずらずらと長い列を成して進んでいく。
 
ロングコートをスタイリッシュに着こなす先生の後ろ姿を眺めていると、1人のギャルが眩しい笑顔を携えて道を逆行してきた。

どこかで見覚えがあると思ったその顔は藤堂先生を見つけるとより一層笑顔を光らせて先生目掛けて走り出す。
 

あ、図書室で先生を探していたあの子だ。
 

先生はその子を見つけるなりうんざりだという顔をしながらシッシッと手で払った。
そんな先生に構わず隣に並んで歩くその子からわたしは目が離せなかった。
 
 
いいな。隣を堂々と歩けて。

いいな。好きだという気持ちを大っぴらにできて。

いいな。先生といるのにあんな可愛い笑顔ができて。
 

はじめての醜い、黒い感情。