あの日溺れた海は、


 
京都に着いたのも束の間、市内の観光のために再びバスへ乗り込むことになった。

 
またもや一番最後に乗り込み、人数確認を始める先生からあからさまに視線を逸らして心を落ち着かせた。
 

人数確認を終えた先生は再び私の前の座席についた。

正面を向けば嫌でも先生の後頭部が目に入るし、窓の外に目をやっても先生の香りが私を揺さぶる。
 
改めて思うと恋している自分って自分じゃないみたい。
 
 
「そういえば、華ちゃんと姫乃ちゃんって最近仲良いよね。」
 
バスの中でふと星香ちゃんが聞いてきた。

わたしは曖昧に「ん〜…。」と答えた。
ただわたしは武田さんに協力して一緒の班になったりしているだけだから仲がいいとも違う気がする。
 
「修学旅行も一緒の班だし…なんか意外!」
 
そう呑気に言う星香ちゃんにわたしは「そうかなあ」と適当に返した。
 
「でも、姫乃ちゃんって、齋藤くんのことが好きだよね。…華ちゃんは、いいの…?」
 

そう遠慮がちに聞く星香ちゃんに、わたしはただただ理解ができずに「何が?」と返すと、星香ちゃんは気まずいような、でも少し興味深々といった顔で返した。
 
 
「だってさ…華ちゃんって、亮くんのこと好き、なのかな、って」
 
「ひえぇ!?」
 
想像もしていなかった言葉に思わず素っ頓狂な声が響いた。