あの日溺れた海は、


テストは先生が教えてくれたお陰で、数学もいつもよりもいい点数が取れた。
 

先生にLINEでお礼を送ると、『どうも。』とだけ返ってきて、先生らしくて笑った。たった3文字だけでも嬉しくて、飛び上がりそうだった。
 
 
そして今日はついに─
 
 
「ええー。くれぐれも大きな怪我や病気をしないように、気をつけて修学旅行に行ってきてください。」
 
 
白い髭を生やした校長先生の長い話ももう終わりがけ。
いつもより早起きをしたわたしはクッとあくびを噛み殺した。

体育館の斜め左隅に立っている藤堂先生に目が入る。

いつものカチッとしたスーツとは違う、ラフな雰囲気。

暗いブラウンのニットに黒のスラックス。
特別おしゃれに気を遣っているというわけではないのに、スタイルの良い先生が着ると何故かすごくおしゃれに見える。

先生の私服姿を見るのはもう3回目なのに、見る回数を重ねるたびにときめきが増えていく。


そうだ。最初の一回目の夏合宿はどちらかというと苦手だったし、2回目、本屋でばったり会った時も好きと意識してたわけではない。
 

何を着ていてもきまってるな…。と思って自分で自分が恥ずかしくなって、赤い顔を隠すために体育座りしている膝の間に顔を隠した。