あの日溺れた海は、

緊張と期待で高まる胸に、意を決して部室の扉に手を掛けた。


「え…。」


扉を開くとそこには、黒いストレートのボブの女の子が私を背に立っていた。どこか見覚えのある立ち姿に、心臓が跳ねる。


「あ、」


その子はわたしに気づいたのか、こちらへ振り返ると、わたしは思わず声を漏らした。
見覚えがあるのもそのはずだ。その子の正体は同じ部員の玲だった。


「あ、えっと…髪、切ったんだ。」


もしかして玲が赤ペン先生なの?いつも鍵はわたしが開けてるのに、どうして持ってるの?

聞きたいことは色々ある筈なのになぜかその言葉が先に出た。

玲は淡々とした口調で「うん。」と答えると、わたしの机を指差した。
その指先にはわたしが置いた原稿用紙と手紙があった。
まさか…と思い足早に近づくと、その原稿用紙にはあの赤い字で校正がされていた。

咄嗟に玲を見ると、彼女は首を振った。