あの日溺れた海は、


 
文化祭が終わってから1週間、定期テストを丁度2週間前に控えたある日の放課後。
 
 
わたしは図書室の机の隅でぐぬぬ、とスマホ片手に1人葛藤していた。

先生は部誌を読んでくれたのだろうか。

わたしの、寝不足になりながらも書いた渾身の一作。
恋愛小説は書けないから、せめてSFから飛び出そうと日常系の小説を初めて書いてみた。
 
 
先生の率直な感想を聞きたい。

小説家を夢見ていた同志として、わたしの好きな人として。
 
でもそんなことでLINEを送ってもいいのかな。迷惑じゃないかな。
たまになら良いって言ってたけどそれって具体的にどれくらいの頻度なのかな。
 
いや、いいのよ。今は有事だもん。好きとかどうとか関係なくただ1人の読者として聞きたい。
 
 
画面の下をタップして、震える手でゆっくりと入力していく。
 
 
 『先生、文化祭であげた部誌、読んでくれましたか?もしよかったら、感想とか、改善点とかあれば教えて欲しいです。』
 
そこまで入力し終えて、そこでまたどうしようかと数分悩んだけど、深く深呼吸をすると、えい、と心の中で呟いて送信ボタンを押した。
 

そしてすぐにトーク画面を閉じて携帯の画面を下にして少し遠くへ置くと、いそいそと教科書とノートを出し始めて勉強を始めた。