「何笑ってるんですか。」
背後から低音ボイスが響き、びくりと肩を震わせ振り返ると、そこには藤堂先生が未確認生物を見るような目で立っていた。
突然好きな人が目の前に現れて、わたしが1人で笑ってる所を見られて、急に真っ赤に染まった頬を両手で隠すと、「なんでもないです」と平静を装ってそう言った。
先生は更に訳のわからないといった言った顔をわたしに向けながら「これ、いくらですか?」と手に持っていた部誌を私の方へ突き出した。
「それ、配布物なので、タダです。」
微かに震えた声でそう答えると、先生は「そう」と言って先程まで月が座っていた、わたしの隣の椅子に腰をかけた。
先生を好きになって、殆ど交流がなかったのに急にこんな近い距離になって、鼓動が聞こえてるんじゃないかとハラハラして、その音を打ち消そうと口を開いた。
「この間、あの、ココア。ありがとうございました。」
「ん。ああ、どうも。」
「わたし、ちゃんと約束守ってます。」
真面目な顔してそう言うわたしに先生はハハッと笑った。

