あの日溺れた海は、


 
「おはよ、井上さん!」
 
 
次の日。学校に着いて教科書をロッカーに片付けてると後ろから声を掛けられた。

聞き慣れていない声の主を見るとそこには武田さんが笑顔で立っていた。

白い肌に長くてくるんとした睫毛、控えめな鼻にピンクの唇。

全てが緻密に計算されて配置されたような彼女の顔ににこりと微笑まれると、私もぎこちない微笑みを返した。
 
 
「昨日は急にごめんね…。」
 
 
そう両手を合わせて眉を下げて言う彼女に「大丈夫」とぎこちない笑いのまま返した。
 
 
「よかったら…今日一緒にお昼食べない?」
 
 
「えっ…」
 
 
昼食は大抵月と食べる約束をしてるから少し戸惑った。ずっと一緒に食べてきたのに、急に他の子と食べるなんて気まずい。
 
 
「あ、いつも他のクラスの子と食べてるもんね、気まずいよね…。」
 
 
 わたしも心が読めるのか、武田さんはそう言うとごめんね、と苦笑いを浮かべながらそう言った。