あの日溺れた海は、


「確かに、なんかする。」


そう言う月の言葉を聞いて、他の部員たちも次々に香っては、「確かに。」と同調した。


「甘い系の香水つけてる子は多いけど、何だろう…この…複雑な香り?…って、嗅いだことないかも。」


そう顎に手を添えて言葉に詰まりながら発する喬佳の声に、わたしも頷いた。


「…まあ、とにかく、見つかったならいいんじゃない?別に書いてあることも正しいんだし。」


一通り読み終わった月がそう言うと、「そうだねー。」と、わたしを取り囲んでいた部員たちはあっさりと自分の机へと戻っていってしまった。

所詮当事者ではない月たちにとってはどうでもいいことなのかもしれない。



でもわたしはこの赤ペン先生の真意が知りたかった。
どうしてわたしの原稿用紙を持っていたのか。どうして校正までしてくれたのか。

そしてどうしてこんなにも的確なアドバイスを送れるほど知識が豊富なのに、文芸部に所属していないのか。

わたしはこっそり赤ペン先生の正体を探ることにした。