あの日溺れた海は、


 
 
 私の分の映画のチケット代まで払ってくれた亮に最初は払わせて、と食い下がったが、デートでは男が払うもんなの!といって聞かなかった。
 
 亮にお礼を言って遠慮なく甘えることにした。
 
 
 
 
 
 
 映画のあらすじは恋に臆病な女の子がひょんなことからイケメン同級生と疑似恋愛をするというものだった。
 
 
 同級生の強引さに最初は戸惑いながらも徐々に惹かれあっていく2人。
 
 
 色々と事件が起きるが最後はキスをしてハッピーエンドで終わった。
 
 
 
 こんな恋愛の始まり方があるなんて少しカルチャーショックだったが、主人公の心情の移り変わりだったり、得るものは多かったなとあくまでも小説家目線で見ていたわたしとは違って隣に座っている亮はぐずぐずと鼻を鳴らしていた。
 
 
 
「…ちょっと、はい」
 
 
 バッグからティッシュを取り出してそれを渡すと亮はありがとうと涙声で言って鼻をかんでもう一枚出すと目頭を押さえた。
 
 
 
「…つまんなかったか?」
 
 
 自分とは対照的に隣でケロッとしているわたしを見て不安そうにそう聞いてきた。まだ掴み切れていないところはあるけれど勉強になることも多かったし、「楽しかったよ」と笑って答えると亮も安心したようによかった、と同じように笑った。