あの日溺れた海は、


 
 

 
 
 
 土曜日の朝。
 
 
 
 クローゼットの中を見渡すとううんと頭を抱えた。クローゼットの中で一番可愛い服。亮はそう言っていたけど、2人で稀に遊ぶ時はジーンズにTシャツかパーカーという可愛げ0の格好をしていたので急に1番可愛い服といわれても難しい。
 
 
 でも一応亮はわたしの作品作りのために協力してくれているわけだし亮の言うとおりにするべきか。
 
 
 …いや、やっぱりジーンズで行こう。今更スカート姿を見られるなんて恥ずかしい。
 
 
 そう思ってジーンズに手をかけた瞬間。着信音が鳴った。画面を確認すると亮からだった。
 
 
 "一番可愛い服で、って覚えてるよな?好きな人とデートをするのにジーンズ履いてくる主人公なんていないんだからな"
 
 
 
 トーク画面にそう表示されたメッセージに思わず振り返って窓を確認する。あまりにもタイミングが良くて覗かれているのかと思ったがカーテンはしっかり閉められていた。
 
 
 
 亮が言うことはごもっともだ。照れ隠しに少しむくれながら一番お気に入りのワンピースを手に取った。