あの日溺れた海は、


「デートだよ。何事も経験、だろ?何か得るものもあるだろうし」
 
 
 顔色一つ変えずにそう言ってのける亮に呆れかけたが、そう言われてみればそうかもしれないと思い直した。
 
 
「デートじゃなくて"取材"ね」
 
 
「はあ?どっちだって変わんねえだろ」
 
 
 違う!と反論すると腑に落ちないような顔をしたが面倒臭くなったのか「わかったよ、いーよそれで」とめんどくさそうに答えた。
 
 
「でもデートって何するの?」
 
 
 今までの人生の中で一度もデートしたことのないわたしは実際にどういうところに行ってどういうことをするのがデートなのかよくわからなかった。
 
 
「そうだなあ。買い物したり、映画観たりとか?はな、何か買いたいもんとか観たい映画とかある?」
 
 
「うーん。あ、本屋さんに行きたいかも。映画は〜…全然わかんない」
 
 
「そうか、じゃあ俺観たい映画あるからそれ観てから飯食ったり本屋行こうぜ」
 
 
 亮が立ててくれたプランにうんうんと頷いた。
 
 
「デートをするにふさわしい服を着てこいよ」
 
 
「取材だってば…」
 
 
 ぶつくさと言うわたしにはいはいと面倒くさそうに適当にあしらうと「クローゼットの中で一番可愛い服な」と満面の笑みを向けてそういった。