あの日溺れた海は、


 処置を受けにテントにいた保健医に声をかけると、丁度他の生徒の処置をしている最中だった。
 
 
「ちょっと時間かかりそうだから保健室で待っててくれる?
外にずっといたら熱中症になっちゃうかもしれないし。」
 
 
いそいそと他の生徒の処置に当たる先生にそう言われたので亮に肩を借りて外から保健室へ向かった。
 
 
「ありがとう。もう大丈夫だから」
 
 
亮の力を借りて保健室のベッドに腰を下ろすと、赤く上気した頬を隠すように俯きながら亮にグラウンドへ戻るように促した。
 
 
「いや、俺が処置してやるよ」
 
 
「ううん、いいって。自分でやる」
 
今は彼と2人きりになりたくなく、少し強めにそう言った。
 
「いや、でも…」
 
 
しつこく食い下がる亮に狼狽えてると、運良く男子綱引きの選手の招集のアナウンスがグラウンドに響き、保健室にも微かに聞こえてきた。亮が出る競技だ。