あの日溺れた海は、

「おい、はな」
 
 
 声がする方を見上げるとそこには走ってきたのか、息を切らした亮が立っていた。
 
 
「大丈夫か、ほら」
 
 
 亮はわたしの腕を手に取り自分の方に回すとわたしに立つように促した。亮の肩を借りながらやっとのことで立ち上がると周りの好奇の目に晒されて顔が真っ赤に染まる。

 
 ゴツゴツとした手、角ばった肩、わたしの知らない亮に驚いた。小学生の頃、あの海での出来事の後、同じように肩を貸してくれた亮のそれとは全く違う、男を感じざるを得ない感触。
 

「斎藤くんっていう素敵な人がいるんだから」
 

月の言葉が頭の中に流れたけど一生懸命首を振って心の中で否定した。