あの日溺れた海は、


 
 
 
 
 100m走の選手の列の前から5番目にわたしは控えていた。とにかく勝負事に興味がなく、かといって悪目立ちもしないような順位でゴールできればななんて考えているとすぐに順番が回ってきた。
 
 
 
「位置について…よーい……!」
 
 鋭い銃声がスタートの合図を送ると一斉に走り出す。思惑通り、可もなく不可もなく、な順位で最初の50mを走り抜ける。
 
 
このままいけば、丁度いい順位で着けそう。
 
なんて呑気に考えながら走っていた。
 
 
ゴールテープまであと10m。急に追い上げてきた他の選手に驚きながらも抜かれないように少しだけスピードを速めた。

 
あと5m、突如右足に鋭い痛みが走る。


1週間ほど前に痛めた足首がぶり返したのか。痛みに驚きを覚えながらも踏ん張った。

 
 だめだ、ここで止まったら。とにかくゴールしなきゃ。
 
 
あと一歩でゴール。



早く、早くゴールしなきゃ。

気持ちが早まって右足で力強く踏み出した瞬間に右足に今までにないほどの激痛が襲い、そのまま足から崩れるように転んだ。

その瞬間、会場一体から聞こえる歓声に悲鳴が含まれた。
 
幸い、前に転んだからゴールをしたという判定になったが今はそれどころではない。


片膝を立てて痛みにじっと耐える。たち上がって処置をしなければと思うのに、ジンジンと脈を打つと共に痛みが襲って立ち上がることさえもままならない。どうしよう…たすけて