あの日溺れた海は、


 
 自分が運動することも、他人が運動しているところも特に興味のないわたしたちは立って応援席の前の方で固まって選手たちに声援を送る人たちを眺めながら他愛のない会話をしていた。
 
 
 
「今度の文化祭で出す部誌
 どういうテーマにするか決まった?」
 
 
「んー。ファンタジーとかSFかなあ」

 
「また?はなってそれしか書かないよね」
 
 そう言うと月は大袈裟にため息をつく。
 
「だって、いいでしょ。楽しいんだから」
 
 
 頬を膨らませながらそう言うわたしに月はまたもため息をついた。
 
 
「恋愛とか書いたら?青春小説も面白そう」
 
 
「あのねえ、恋愛したことない人がどうやって恋愛小説書くの」
 
 
 わたしも月を真似てふうっとため息をつく。
 
 
「恋愛、してみればいいじゃない」
 
 
 キッパリとそう言う月に「そんな簡単にできたら苦労しない」と心の中でつっこむ。
 
 
「高校生にもなって一度も好きな人ができたことないなんて今どきありえないわよ
 …もしかしたら嘘ついてるだけで本当は好きな人いたりして」
 
 じいっと疑いの目で見てくる喬香をわたしはありえない、と笑い飛ばした。
 
 そんなわたしを見つめて喬香は半分ふざけて睨んでくる。